市民対談2
小口 治男 × 堀内 通成 × 水口かずえ
環境を守る
小平の宝物、玉川上水を大切にして
水と緑を守り育てる
小口治男さん
鈴木町、日本自然保護協会自然観察指導員。自然を守るボランティアリーダーとして市内外で活動
松山景二さん
上水本町、学習支援ボランティアとして7年前から市内の小学校で玉川上水をテーマとした授業に参画
玉川上水あっての小平の水と緑
住民が守り、伝えたい
水口 おふたりとは「ちむくい(ちいさな虫や草やいきものたちを支える会」の玉川上水の「植生調査」や「生き物調査」でご一緒しています。
松山 小平のよさは「水と緑」と、だれもが言いますよね。しかしそもそも小平に水をもたらしたのは玉川上水です。本来水がないところに玉川上水をつくったから水がある、水があるから緑がある。玉川上水あっての水と緑であり小平だというのが、調査で改めてわかります。
小口 しかも羽村から四谷までの玉川上水で、これだけ豊かな生態系をもっているのは、小平エリアを置いてほかにありません。だからこそ小平の住民がこれを守って後世に伝えることがとても大事なんです。そういうことが、小平市の「生物多様性地域戦略」の要になってきます。
水口 地域の、つまり小平なら小平の生物多様性を守って、まちづくりにいかしていこうというのが「生物多様性地域戦略」ですね。2008年にできた生物多様性基本法によって、各自治体で策定しましょうとされています。ただ、なんだか難しそうだと思っている人も多いようですし、生物多様性という言葉自体、よくわからないとおっしゃる方もいます。
子どもたちは知っている「生物多様性」
虫や鳥、草や木から、農業まで。テーマはさまざま
小口 生きものというのは多種多様でみな個性があって、ただそれはばらばらではなく、それぞれがかかわりあい、つながりをもって生きている、それが生物多様性です。耳慣れないという人もいますが、これ、実は子どもたちは知ってるんです。環境教育として小学校段階から学習しますから。僕はときどき都内の小学校に招かれますが、先日も練馬区の小学校で森林の役割についての授業をしました。森林を知るというのも生物多様性を知ることのひとつ。例えば虫や鳥のこと、草や木のこと、人とのかかわりでいえば農業のことなどなど、生物多様性にはさまざまなテーマがあります。
水口 農業もかかわる。
小口 はい、特に最近は農業を重視し、農地の生きものを守って農業を守ろうという活動が各地で展開されています。例えば小平は農地があることで、緑被率、つまり緑で覆われている土地の面積割合が増しています。
水口 地元の私たちが農作物という恵みをわけていただけるというだけでなく、温暖化を防ぐための役割をも、農地は担っているんですよね。
小口 はい、そのことをみんなが知れば、若い農業者が誇りをもって農業に取り組めます。そういうことも含めて生物多様性地域戦略は必要なんですが、小平で生物多様性を生かしたまちづくりをすると考えたときには、やはりその中心に玉川上水があるといえます。
玉川上水を歩き、学ぶ小平の子どもたち
市民全体の財産として大切にしたい
松山 うん。だから玉川上水にはたくさんの切り口があります。僕は市内の小学校で学習支援ボランティアとして玉川上水を学習する授業に参画していますが、理科でも、社会でも図工でも総合学習でも、なんでもできます。学年も問いません。1年生から6年生、特別支援学級、すべての子どもたちと玉川上水を歩き、学ぶわけですが、まずはとにかく子どもたちに、身近な玉川上水にはけっこう楽しいもの、美しいものがあるんだよというのを伝える、それが1、2年生への授業です。たとえば玉川上水にどんな虫がいるのか探したり、子どもたちが「へえっ」て思うところから始めます。
水口 虫を触れない子とかもいますよね。
松山 いるいる、最初は泣いちゃう子もいますよ。でも、友だちが触っていると、じゃあ私もってなったり。
小口 虫のことをちょっと教えてあげると、子どもたち、自分で見つけていきますよね。そして図鑑が1冊あれば、どんどん調べて、我々よりはるかに知識がある子もいます。
松山 ええ、夢中になって調べていって、実によく知っている子もいるし。子どもはバラエティに富んでいます。
小口 そういうところから、小平にはこんなにたくさんの生きものがいる、こんな自然がある、玉川上水はすばらしいって実感していくのだと思います。それを子どもたちだけではなく、小平市民全体で共有していきたい。現状では残念ながらまだそうなっていません。例えば私は鈴木町に住んでいるんですが、鈴木町の住民にとっては玉川上水は遠い存在で、道路が分断するといっても「別にいいじゃないか」という声があります。なぜかというと、知らないから。知って、貴重な存在だ、小平市にとっての財産だとわかれば、だれもが大切にしたいと思いますよね。
玉川上水を、ユネスコ「未来遺産」から
「世界遺産」を目指す活動へ
水口 玉川上水は文化財としても重要で、国の史跡の指定を受けていますが、それは「玉川上水を守る会」の長年の地道な活動があってのことだと思います。今では玉川上水の自然や伝統を守り育もうというさまざまな活動があって、玉川上水ネットという市民団体と個人のネットワークの活動が、最近、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録されました。未来遺産の伝達式には、玉川上水にかかわる武蔵野市、小金井市の市長さんも出席されていましたが、住民とともに自治体がもっと積極的になってほしいものと思いました。
松山 市ができること、やらなければいけないことはたくさんあると思いますよ。玉川上水は、今、市内外の多くのみなさんが散歩したり、子どもたちが勉強したり、楽しいこと、意味があることがたくさんある、その現在の意味を表現し、客観化することも、できるのではないでしょうか。
水口 そうですね、マップを作ったりも必要だと思いますし、自然を損なうことなく玉川上水をより多くの人に楽しんでいただくための工夫をしなければ。
小口 そう思います。例えば、伐採木をチップにして遊歩道に敷くことで、歩きやすく同時に木の根を守ることができますし。トイレと水場の整備も必要です。
水口 自然を守り、文化財として守ったうえで、もっとPRするのが大事ということですね。玉川上水はほんとに貴重な、小平の宝ものです。世界遺産を目指したいものだと思います。
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